[戻る]
      

勝どきにようこそ。
僕は勝どき宙七。
君に会いたいってずっと思っていたよ。

僕の駅はね、大江戸線の乗降者数では
(六本木)史くんに次いで4位なんだ。
けっこー人気者でしょ?
このあたりにマンションやビルが建てられてから、
たくさんのお客さんがやって来るようになったんだ。
広く使えるようにホームや出入口も新しく増設したんだよ。

勝どきは海に囲まれた場所だから、駅も海をイメージしているんだ。
ブルーやグリーンがメインカラーになっているし、
この壁や柱は細かい凹凸(おうとつ)があって
波をモチーフにしているんだよね。

……ねえ、ここにふれてみて?
ホームの柱に僕の名前が刻まれているのがわかるかな。
大江戸線の中で唯一、駅名が型押しされているんだよ。
名前が印象に残るようにって想いを込めて……。
君の心にも僕のこと、深く刻んでほしいな。

ほら、こっちにおいで。
改札の近くに大きなパブリックアートが待っている。
タイトルは「海 ―Living Sea―」。
壮大な神話の世界を描いている絵なんだ。
真ん中にいるのが海の神トリトン。
大きな音で波を操る法螺貝を吹いている。
空から降り注ぐ柔らかい光が海の底まで広がっていて……
彼らはここから僕たちを見守っているんだよね。

深い海の奥を覗いているような不思議な気持ちにならない?
僕、この絵が好きだから、君と一緒に見られてすごく嬉しいな。

僕の駅、ほかにもデザインが凝っていてさ、
ここの出入り口は勝鬨橋をモチーフにしているんだ。
橋みたいなアーチになっているでしょ?

この晴海通りの少し向こうに勝鬨橋が見えるんだ。
日本最初の可動橋で、真ん中が上に開く珍しい橋。
昔は、墨田川を渡る船もたくさんあったんだけど、
少しずつ減ってしまって、今は開かずの橋になっている。
けど、この街のシンボルなんだ。

ゆったり運河を進む船と、
大きく開く橋の姿を一度は見たかったよね。
今は夜に橋がライトアップされていてとてもキレイなんだよ。

君と一緒に行ってみたいけど……
だーめ。今日は勝鬨橋には行かないよ。
(築地市場)遠哉のとこには行ったことがあるでしょ?

あいつのこと好きになっちゃうかもってすごく心配してた……
今日は僕だけを見てほしいから……なんてね。

もっと君の話が聞きたいな。
ねえ、君はどんなことが好き?教えて?

一緒にコーヒーを飲みに行こうよ。
このあたりにはお気に入りのカフェがたくさんあるんだ。
オーダーしてから豆を挽いてくれる店があって、
そこならゆっくり過ごせると思うよ。

ここから月島さんのところにもすぐ行けるから、
美味しいお店もいっぱいあるんだよね。
もちろん、もんじゃにもよく行くよ。

それから、毎月、ここで「太陽のマルシェ」が開かれていて、
キッチンカーとか、珍しい野菜が揃っていて、
見ているだけでも楽しいんだよね。

君といろんな場所に行ってみたいな……。

実はさ……今日は初めてのデートだから、少しドキドキしてたんだ。

けど、君のそばいるとすごく楽しくて、
その笑顔を見てると幸せな気持ちになってくるんだ。
これってやっぱり運命なのかなあ?……ねえ、どう思う?

今日はこの街でのんびり過ごそうね。
まずはこっち。手を繋いで行こうよ。

もうちょっと、僕のそばにいて。